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2011年10月20日 (木)

開発の現場から:管理強化の罠を避ける

 組み込み機器開発を長年やってきた。PMとして長年やってきたが、さすがに50歳を超えると、体力がもたなくなって、なんとなくPMO的な仕事をする機会が増えている。PMO的、と言ったのは、PMOの役割は他にいるので、若いPLの教育係をかねたような仕事である。
 あるプロジェクト会議で、PMが、スケジュールの見える化ができていない、と怒り出した。どこがボトルネックかわからない。見えるようにしろ、とPMOへ指示した。このプロジェクトにおけるPMOの位置づけは、プロジェクトの管理面でPMへ情報を上げるという事務局的役割なので、この指示は間違いではない。
 ただ、私は、この指示は下手をすると現場の混乱を生み出す、と思った。事務局的役割のPMOなので、PMOのメンバーは実務経験が豊富というわけではない。そんなメンバーが、PMのこうした指示を受けるとどうなるかというと、経験的に言えば、今よりも精緻な情報を現場にあげさせようとするのである。
 全く管理できていないプロジェクトならともかく、WBSはきっちりと書いて、WBSレベルでの進捗報告が毎週必ず全パートからあがってきているプロジェクトで、これ以上管理レベルを精緻にすることは、全く意味がない場合が多い。今回、PMは、個々の詳しい数字が欲しいのではなく、ボトルネックを知りたいといっているのだ。であれば、PMOがそれを一目でわかるように、現場からの報告を加工して見える化すればいいのである。
 現場に対する管理レベルを精緻にすることは、PMOから見ると美しい。教科書にある通りの管理ができているように錯覚する。だが、組み込み機器程度の開発で、大規模IT開発を対象としたプロジェクト管理のレベルの管理を実施するなんて意味がない。
 しかも、あるレベルと超えると、現場は嘘をつくのである。悪意の嘘ではなく、報告のための報告は嘘でしかなくなるのである。たとえば、設計の進捗率を、1%単位で報告させるプロジェクトがあったとする。私はナンセンスだと思う。設計の進捗度が78%か79%かを設計フェーズでわかるのだろうか?全体像がわかるのは設計が終わってからだ。なので、10%刻みの数字ならよもかく、1%刻みの数字は、1桁めは嘘でしかないと思う。そして、こんな報告をさせていると、各パートのPLは、先週78%だったので今週は79%にしておくか、とかいい加減なことをやり出す。それよりも、今週70%から80%になる予定だったのに、70%のままである、ということの方がよほど情報として現場の実態を表しているはずだ。
 PMOが忘れてはいけないのは、PMが何を要求しているか、それを実務上意味のある精度で現場に大きな負担をかけることなく実施できるか、である。
 今回のPMの叱責に対し、PMOが管理レベルを精緻にするという方向で動かないよう、ガントチャート上でボトルネックが常にわかるようにし、そのボトルネックになっている工程での見通しを、PLに定性的でいいので、報告させるようにした。
 事務局タイプのPMOは、プロジェクト管理の本を勉強すればするほど、美しく管理できるものだと誤解する。でも、仕事をしているのが人間である以上、精密な管理はできないし、意味もない。

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