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2012年7月14日 (土)

技術者と愛国心:なぜ中国・韓国企業に就職すると売国奴呼ばわりされるのか

 日経ビジネス7/9号の特集は「今時の産業スパイ」。その中で、日本企業に勤めていて、中国・韓国企業に再就職した人の話が載っている。産業スパイの特集記事の中で取り上げるのはどうかと思う話である。いかにも、この人々が産業スパイの元凶だというイメージを与えるからだ。
 しかし、どうやら編集長の意図はそうではないようだ。編集長の視点という巻頭言を少し長いが引用する。

 プロ野球では戦力外通告を受けて自由契約になった選手が、別の球団に拾われて活躍することがあります。こんな時、その選手を採って再生させた球団の監督は称賛され、元いた球団の監督は「育て方が悪かった」「見る目がない」と批判の対象になります。もちろん選手本人は「リストラの星」などと言われて、ファンの人気を集めます。ところが、企業社会で同じことが起きると、なぜか批判のホコ先は、選手を採った球団や監督、そして選手自身に向かうようです。
 「裏切り者」「売国奴」。日本企業を飛び出して中国や韓国メーカーなどに移った技術者の多くがこう言われ、肩身の狭い思いをしています。日本人技術者を引き抜いた中国や韓国企業に対しても「技術を盗んだ」というような言い方をします。しかし、本当にそう言い切れるのでしょうか。海を渡った技術者の多くは、元いた日本企業では処遇に不満を持っていた人たちです。プロ野球の流儀に従えば、使いこなせなかった会社や管理職が悪いという指摘も成り立ちます。

 基本的には私も同感である。技術者というのは、サラリーマンとしての愛社精神はあるが、それと同時に自分のやっている技術に対する愛着心もある。その技術を会社から否定された場合、その技術を役に立てるところへ移りたいというのは、技術者の行動としてよくわかる。日本内での移動なら、それは売国奴とは言われない。米国(特にシリコンバレー)への移動なら、活躍の場を求めて米国へ、という文脈で語られる。それが、中国・韓国だと技術流出の片棒を担いだということで、売国奴扱いされる。でも、技術者としては、自分の技術の生きる場をさがしているだけである。
 今の日本には、事業に直結しない技術に対して冷たい風潮がある。技術に勝ってビジネスに負けると称して、いろんなところでビジネス主導の技術開発が叫ばれている。基本的には、まずビジネスということは正しいと思う。ただ、ビジネスで正解はわからない以上、過度の技術の絞り込みが起きていないか、と疑問がある。ちょっとした無駄の部分が新しいイノベーションを生むのが技術の世界である。である以上、本当のビジネス主導の技術開発とは、意図的に無駄の部分を作っていくことではないのだろうか。そうすれば、技術者の流出も、かなりの部分が防げると思うのだが。

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