塩野七生著「十字軍物語」:キリスト教徒でないから書ける十字軍の物語
塩野七生著十字軍物語全3巻を読んでいる。随分前に刊行された本なのだが、読み始めるのが遅れた。この全3巻の前に刊行された絵で見る十字軍物語があまり面白くなかったからである。さすがの塩野七生も題材によっては面白くないものもあって、十字軍というのはそいいう題材なのだと思い込んでいたからだ。
実際には、さすがに塩野七生である。本当に面白い。その理由の一端は、十字軍物語2の中の以下に引用する文章が象徴している。
私には、欧米人の書く十字軍の歴史は、ある矛盾を内包しているように思える。それは、キリスト教徒による十字軍遠征の真因を、十字架への誓いという信仰のみに見たいという思いのあまりに生じた、矛盾ではないかと思う。
キリスト教徒でもイスラム教徒でもなく、歴史を書くことの出来る著者だからこそ書ける十字軍の物語になっているのである。キリスト教徒でもイスラム教徒でもない日本人が読んで面白いか、と言うとこれが面白いのである。著者の書く「物語」は、登場人物を中心に描かれた「物語」である。十字軍そのものの歴史は大抵の日本人には興味はないだろう。でも、キリスト教徒とイスラム教徒にとって一大事であった十字軍を題材に、その中の登場人物の物語を堪能できる。
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